U-16プログラミングコンテスト石狩模擬大会レポート

2020年10月18日(日)に、石狩では初開催となるU-16プログラミングコンテストの模擬大会を実施しました。

今回、さくらインターネットが主催し、藤女子大学人間生活学部人間生活学科の共催で企画した本コンテストですが、残念ながら対象となる石狩市内在住の16歳以下の子どもたちからの応募はありませんでした。

来年以降、石狩にプログラミング教育を根付かせていくために必要な「地域の学び場」をどのような形で作っていけばよいのか、初開催を目指した今年は課題の残る結果となりましたが、今回一緒に企画・運営をしてくださったプロジェクトマネジメントを学ぶ学生や藤女子大教授と共に、プロジェクトをどのような形で終わらせるのが良いのか検討した結果、学生が参加者と運営を兼ねる形での模擬コンテストに内容を切替え、準備してきたことを実践することになりました。

当日の準備

プログラミングコンテストは、コロナ禍での開催ということで、オンラインでの実施を想定して準備を進めてきました。
運営するさくらインターネットの社員と藤女子大学の学生は、オンライン配信のため藤女子大学のパソコン室に集合。
各参加者との接続確認や、発表時の画面共有のテストなど、本番さながらに1人ずつ実施していきました。

ソーシャルディスタンスを十分に取りつつ、各家庭からのZoom参加を再現するため、配信中はマスクを着用せずに進行します。

参加者1人1人は「自宅からのZoom接続」を想定しつつ、実際には同じ部屋に集合

司会を始めとする運営者側のメンバーは、オンラインでコンテストの雰囲気を盛り上げるため、石狩のゆるキャラ「さけ太郎・さけ子」のイラストを背景に配信を実施しました。

司会は、原稿を読むにあたり、自分たちの目線が配信時に不自然にならないよう、原稿の置き方など綿密に調整をしていました。

原稿を目の高さに合わせるため、ホワイトボードを利用して工夫する司会者(写真奥)

その後は進行全体を最終確認し、いよいよ模擬コンテスト本番を迎えます。

模擬コンテストの開会

司会の開会の言葉に続き、主催者であるさくらインターネットの朝倉より、今回大会への想いや、プログラミング教育の重要性についてお話させていただきました。

実際には目の前にいる参加者に向けて、オンラインでプレゼンをするという状況でしたが、司会者は事前の綿密な確認が功を奏して、顔の向きや目線はかなり自然な感じです。
とは言え、オンラインで、Zoomをほぼ初めて使うような子どもを含むご家族が対象のイベントの場合、司会の盛り上げ方、言葉の間合いなど、オンサイトとは異なり難しく感じる面もあったのではないでしょうか。

オープニングは、少し緊張感の漂う雰囲気の中、スムーズに進んでいきました。

参加者による作品紹介と作品審査

主催者挨拶の後は、7名の参加者による作品紹介です。
初めてのプログラミング作品作りに苦労した学生も多かったようですが、実はたった1回のScratch体験会を実施しただけで、あとは皆さんご自身で調べながら作品を仕上げていったようです。

パソコンの得意な友達の力を借りたり、チュートリアルに出てくるプログラムを少し変えてみたり、今の力でできることでそれぞれの世界観を表現していました。
ぜひ作品のプレゼンも含めて、学生たちの力作をご覧ください。

1人1人の作品紹介の後には、発表者以外のプロジェクトメンバーが審査用フォームに入力を行いました。
今回模擬コンテストということになり、予定していた審査員への依頼を取りやめたのですが、学生から学生同士でお互いの作品に対するコメント共有などを取り入れたいというアイディアが出され、その流れで審査もプロジェクトメンバー全員で行うことになりました。

これは、コンテストを企画する学生の学びとしてとても有意義なことで、審査員にはどのような目線で審査をしてもらいたいのか、参加者と審査員両方の体験を通して、具体的に考えるきっかけとなったと思います。

審査結果の入力後、発表者の前に発表した参加者が作品についての感想を話すように司会者が促していました。
参加者がお互いの作品を評価しあうことで、それまで少し緊張感の漂っていた場が、盛り上がりを見せ始めたように感じました。

U-16プログラミングコンテストでは、作品を発表した子どもたちが大人からコメントをもらい褒めてもらう場面も大切にしたいという想いがありますが、出番が終わってしまった子にとっては少し退屈な時間になりがちです。
子ども同士の感想の交流というのも、特にオンラインの場では盛り上がりを作る良い方法かもしれません。
実際の参加対象者は幼児から高校1年生まで年齢も幅広く、自分よりも上の学年の仲間からのアドバイスは、もしかすると大人からのアドバイスよりも心に響くものになるかもしれませんね。

作品を見ている参加者に扮した学生の様子ですが、少しずつ笑顔が見られ、作品のURLを共有してあったので、作品紹介を聞きながら作品で遊んでみたりもしていたようです。
実際のオンライン開催では、作品の展示方法に課題があると思われますが、URLで共有できるようなタイプのプログラミング作品やデジタル作品であれば、オンラインで参加していても一緒に楽しめるのではないかと思いました。

また、手の込んだプログラミング作品以外にも、シンプルな作品で参加者から笑いが起きる場面があるなど、表現の工夫次第で難しいことをしなくても参加者の心をつかむことができることを体験できたのではないかと思います。

クリックするたび鳴き声を出すクリッカーカエル。カエルが鳴く度、なぜかつい笑ってしまう。

学生の作品紹介の後、藤女子大学教員チームからも参考作品の紹介がありました。
「2ちゃんねる」をヒントに作成したおみくじということで、感想を語る学生の少し冷めたコメントが印象的でした…。

また、参考作品紹介はもう1点あり、作品の応募期間に間に合わなかったが、本当に作りたかった2点目の作品を何とか仕上げて提出したという参加者に発表してもらいました。
あきらめずに最後までやりきる姿勢が、皆さんから高い評価を受けていました。

審査結果発表

15分の休憩中に、審査用フォームから登録された総合得点を元に、奨励賞、優秀賞、最優秀賞を主催者側で決定し、発表しました。

発表の際、主催者側でScratchで作成したさけ太郎のアニメーションを交えて盛り上げてみました。
プロジェクトメンバーの学生は石狩市民ではない方が大半だと思われますが、今回のコンテスト企画の際「石狩らしさ」をどう表現するか?という点でかなり悩んでいらっしゃった印象があります。
そもそも、石狩らしさを表現できるほど、石狩のことを知らないというのが、アイディアが出ない原因の一つだったと思うのですが、石狩のゆるキャラであるさけ太郎・さけ子も、知らなかったとのこと。

イベントのコンセプトに合わせた表現、場の盛り上げ方にどこまでこだわるのかなど、学生にとっての学びはここにもあるのではないでしょうか。

審査の結果最優秀賞に選ばれた作品は、唯一Viscuitを使った作品でした。
かわいいイラスト、裏技、桃太郎のお話をもとにしたゲーム設定など、非常に評価が高く、文句なしの最優秀賞です。

最優秀賞に輝いた作品「桃太郎」

エンディングと終了後の表彰式

審査結果の発表が終わり、全体の講評と閉会の挨拶を、共催の藤女子大学から学生の代表が行いました。

講評では、初めてのプログラミングに苦しみながらも、全員が個性のある作品を作り上げた点を取り上げ、「みんなすごい!」と感想を話してくれました。
また、このイベント企画全体において、学生同士高めあっている実感が持てたということで、最後には「今度はみんなで超大作を作りたい!」という野望まで話してくれました。

オンラインイベントでは、その場で賞状や賞品を渡したりことができないため、今回イベントの中で表彰式らしいことは実施していないのですが、イベント終了後にサプライズで表彰式を行いました。

奨励賞の皆さんには、さくらインターネットノベルティセットをプレゼント!

奨励賞の方にはさくらインターネットノベルティセットと図書券、優秀賞の方にはScratchの本(Scratchでつくる!たのしむ!プログラミング道場)と図書券、最優秀賞の方にはmicro:bit、micro:bitの本(手作り工作をうごかそう!micro:bitプログラミング)と図書券を、さくらインターネットからプレゼントさせていただきました。
また、今回のイベントを応援いただいた石狩市職員の吉田様より、石狩の風景写真で作ったポストカードをいただき、こちらも全員にプレゼントさせていただきました。

石狩の風景で作った素敵なポストカード

今回、模擬大会となったU-16プログラミングコンテスト石狩大会ですが、企画や運営でプロジェクトマネジメントを学んだ学生の皆さんが、さらにこれからの学習でこの活動を総括し、ぜひこれからの教育の在り方について考え、学んでいただけたらと思っています。

さくらインターネットとしても、企業のCSRという形で実現可能な教育への協力の方法を模索していきたいと考えています。

Programmer’s Day パネルディスカッション


左から、奥田氏、小島氏、朝倉。右はモデレータの利根川氏

2019年10月20日(日)、CSAJ×U-22×JJPC 合同企画 “Programmer’s Day” が、秋葉原コンベンションホールで開催されました。セミナーやブース展示、プログラミング体験やワークショップが開催されていると同時に、隣では22歳以下を対象とする U-22プログラミング・コンテストの最終審査会も開かれていました。

その中から、この日のスタートを飾ったパネルディスカッション「プログラミング教育における学校現場と企業連携事例とトップ層の子どもの可能性を引き出すには」を紹介します。

モデレータは、利根川 裕太 氏(NPO法人みんなのコード 代表理事)。パネリストは、小島 寛義 氏(栃木県小山市立東城南小学校 教諭)、奥田 遼介 氏(株式会社Preferred Networks 取締役 CTO)、そして当プロジェクトの 朝倉 恵 です。

みんなのコードのミッション「全ての子どもが プログラミングを楽しむ 国にする」

まず、利根川氏より、2020年に必修化する小学校については社会的関心が高いが、中学校(2021年に必修化)や高校(2022年に必修化)については情報が少ないこと。中学校では現在「技術・家庭」でやっているプログラミングの内容が倍増すること、高校では「情報科」において共通必履修科目となり、大学入試の出題科目となることも検討されていることなど、プログラミング教育の現状についての解説がありました。
そして、みんなのコードは「全ての子供が プログラミングを楽しむ 国にする」をミッションに活動していると紹介されました。

パネルでは、学校現場と企業連携の事例を、小島氏が学校現場からの視点で、朝倉が支援する企業の立場で紹介しました。

栃木県小山市立東城南小学校では、実証実験として kintoneを活用した国語や理科の授業を行いました。これにより、今まででしたらプログラミングに触れることがない子、例えばスポーツに打ち込んでいるような子にも、それに触れるチャンスを与えることができたそうです。これをきっかけに、自分の中にあった能力に気がつくこともあるのではないかと強く感じたとのこと。
こちらに、サイボウズとみんなのコードが共同で、教育指導案を提供しています。小学校指導者を対象とした研修の窓口も用意されており、実際の授業の様子も動画でご覧いただけます。

さくらの学校支援プロジェクトが、石狩市でどのような活動をしているかは、このサイトの情報をご参照ください。現在、活動は石狩から北海道全域に広がりつつあり、そのために地域にある大学や専門学校などと情報連携をし、北海道ならではのプログラミング教育支援の輪を形成しているところです。

奥田氏のプログラミング・コンテスト歴

奥田氏は、小学生の時からプログラミングをはじめ、高専時代にはプロコンに数多く出場するほか、国際情報オリンピックの日本代表にも選ばれました。
中学生の頃には、家にあったアルゴリズムの本を読んでいたそうです。しかし、プログラミングにも飽きがきて、コンピュータって何ができるのか、何かもうちょっと面白いことができないのかと自発的に色々と学んだそうです。

「自分が面白いと思えるものがみつかると伸びる」

トップ層の子どもの成長を見守るには、常に新しいことに興味が持てるような、内発的な動機付けや環境が大切なのだと伝わってきました。

登壇されたみなさんからのメッセージ:

奥田氏
「高専時代、プロコンなどに出場した時には、周りにすごい人がいるという刺激を受けることができました。今思うと、出場するための手配は、全て部活の先生がしてくれていて、自分は何もしなくてよかったのです。大人ができる普通の支援ですが、それが子どもにはとても嬉しかったです」

小島氏
「プログラミング教育を小学校で実施していくためには、まず先生たちを育てる必要があります。企業や団体が、現場に入ってきてくれることを期待しています」

朝倉
「先生がた、教育委員会の方々、支援が必要だということ、遠慮せずに声をあげてください。企業の側から声をかけられる、きっかけを作ってくださると嬉しいです」

利根川氏
「プログラミング教育は先生だけがやるものでも、企業だけがやるものでもない。誰しもが貢献できるものなのだから、もっと社会全体が盛り上がることを期待している」

最後は、モデレータの利根川氏の、「みんなで、(プログラミング教育を)一歩一歩確実によくしていきたい。今日はそれを、みなさんにお伝えしたかった」という言葉で締めくくられました。
この、日本という社会にいる人が、それぞれの立場でできることがあります。それを、あせらずに、できればわかりやすく伝えていきたいと思いました。
みなさんも、是非ご一緒に。プログラミング教育のために出来ること、考えてみませんか。


さくらの学校支援プロジェクト
三谷 公美

「第52回 ISP&クラウド事業者の集い in 旭川」パネルディスカッション レポート

2019年9月12日(木) JAIPA が開催した「第52回 ISP&クラウド事業者の集い in 旭川」において、「北海道で実績を積んだ3名の方から見た日本のプログラム教育について」と題したパネルディスカッションが行われ、弊社代表取締役社長の田中邦裕がモデレータを務めました。

左より:朝倉(さくらの学校支援プロジェクト)、田中(さくらインターネット代表取締役社長)


パネリストとしては、下村幸広氏(北海道旭川工業高等学校 情報技術科 教諭)、西原翔太氏(国立研究開発法人 情報通信研究機構 ナショナルサイバートレーニングセンター 研究技術員)、朝倉恵(さくらインターネット株式会社 さくらの学校支援プロジェクト シニアプロデューサー)の3名が登壇され、各々の立場からプログラミング教育を紹介し、現在抱えている諸課題、そして未来への展望を語りました。

まず、「プログラミング教育とは何なのか?」から始まりました。
プログラミング教育とは、論理的思考、プログラミング的思考を育むためのものであり、コードを書くことを教えるための授業ではないこと。従来からある授業の中に、論理的思考を育てる要素を取り入れていくということが、説明されました。

また、元は道内の高校教諭であった西原氏からは、小学校の必修化が話題の中心となっているが、中学校や高校の学習指導要領も、小学校で充分な能力を身につけたことを前提に改定されていること。それは現段階で見ると、あまりに専門的な内容であり、現場の先生方だけで対応できるのか疑問であると感想が語られました。

さくらの学校支援プロジェクトの朝倉からは、2017年から開始した、石狩市への小学校プログラミング教育支援のプロジェクトがどのように進んでいったのか、小学校での実践の様子なども交えながら紹介がありました。
先生方は、「教えるプロ」なので、どのような手法で、どのような能力を伸ばすのかをつかむことができれば大丈夫。あとは、先生方が不安に感じている部分をサポートし、信頼関係を築きながら、あせらず見守っていくことが大切とのことでした。

左より:西原氏(NICT/前 富良野緑峰高等学校 教諭 )、下村氏(旭川工業高等学校 教諭)

下村氏は、北海道旭川工業高等学校の教諭であり、U-16プログラミングコンテストにて小・中学生へのプログラミング指導もされています。その立場から、プログラミング教育により、さらに興味を持った子のためには、学校の外でもプログラミングに触れることができる場が必要となってくると提起されました。スポーツ少年団のようにプログラミング少年団が、地域の専門家により構成されていると、学校で興味を持った子たちの、その先の場所があるということで、先生がたも安心できるとのことです。

今回は、教える側の立場や、その経験のある方々によるディスカッションであったため、必修化による一般の先生方の苦労の様子も伝わってきました。子供たちがプログラミングを楽しいと感じる未来にむけて、「プログラミング教育とは、論理的思考を育むことであり、コードを書けるようになるためのものではないこと」を、みんなで理解した上で、参加者の中にたくさんいた「一般のエンジニア」の方々にも、地元で何かあれば是非ご協力をお願いしますとの呼びかけをしました。


質疑応答になると、会場から「一般のエンジニアは小学校のプログラミング教育がどのようなものなのか分かっていない」と、実情を伝える声がありました。このパネルディスカッションを通し、「ずっともやもやしていたことに回答が得られた」ともおっしゃっていました。これからも、エンジニアを始めITに関わる皆さんに、学校でのプログラミング教育がどのようなものなのか、理解を深めてもらうことが大切だということがわかりました。

さくらの学校支援プロジェクト
三谷 公美